花の名は、ダリア
ソージは瞬きを数回繰り返してボヤける視界の鮮明度を上げ、もう一度ダリアの隣にいるちっちゃいのを見た。
十才くらいの女の子だ。
あれがきっと、バーサンの孫。
女の集団に埋もれていたから、全く気づけなかった。
「子犬?」
「うん。」
なんか…
しゃがんで、丸くなって、くっついた二人が交わす単語だけの会話とか…
可愛いな、おい。
ついさっきまでとは打って変わったユルい空気を醸し出しつつ、幼女二人は語り合う。
「なら、怖がって声を出せないだけかも。
ココからは血の匂いがしないから、生きてると思うわ。」
「ほんとう?」
「ほんとよ。
コレ持ち上げてみるから、呼んであげなよ。」
「え… でも…
重そうだよ?」
「平気よ。
私、バケモノだもの。」
心配そうな顔をする孫に見守られながら、立ち上がったダリアは瓦が大量に乗ったままの板に手をかける。
彼女の言葉通り、瓦礫はまるで発泡スチロールであるかのように軽々と持ち上がった。