花の名は、ダリア
「ありがとう…
会いに…来てくれて…
ありがとう…
傍にいてくれて…
あー… 俺…
やっぱ死にたくねェなぁ…」
祈りにも似た最後のフレーズを聞いて、ダリアの美しい顔が強張る。
けれど彼女のその表情を見て、ソージは目元を微かに和ませた。
「そうじゃねェよ…
もう…死ぬのが怖ェから…なんかじゃなくて…」
彼女が揺らぐ。
彼女が霞む。
紡いだ言葉が、ちゃんと伝わっているのか微妙。
それ以前に、ちゃんと理解できる言葉になってンのかすら微妙。
けれど。
最後まで聞いていて?
「ずっと…
貴方の傍に…いたかった…
ずっと… ずっと…
貴方と…生きていきたかった…
それで…この世界が滅びるその日に…
俺は貴方に告げるンだ…
ダリア…
散らない花でも…貴方は美しかったと…
俺にとっては…貴方だけが…
唯一の花だった…と…」
あぁ…
彼女が消える。
優しさを失わず、初々しさを失わず、孤独という闇の中で永遠の命を燃やし続ける麗しい花よ。
いや、消えるのは彼女じゃない。
繋いだ指から力が抜けて。
瞼が落ちて。
鼓動が間遠になって。
消えるのは、俺だ。