花の名は、ダリア
Ⅸ
夢を見ていた。
とてつもなく淫靡で、煽情的で、官能に満ちた夢だった。
天からの最期の贈り物だと思った。
もしくは、最期に自らの願望が見せた幻想だと思った。
夢であっても、もう悔いはないと思った。
なのに…
(…
俺… 生きてンじゃん…)
胸元がはだけた上半身を起こしたソージは、ポリポリと頭を掻いた。
見渡せば…いや、別に見渡さなくても、ココは紛れもなく昨夜の廃寺。
ソージのいる仏殿の奥までは届かないが、壊れた扉からは陽の光が差し込んでいる。
朝だ。
おいおい…
まだ生きてるよ。
『最期』『最期』言っときながら、フツーに目ェ覚ましちゃったよ。
カッコ悪。
へし折られて転がる柱。
一部、崩れ落ちた天井。
どうやら、ソノ辺りは夢ではないらしい。
けれど、ダリアの姿はない。
アノ辺りはやっぱ夢か。
まぁ…仮に現実だったとしても、きっと逃げられてンだろな。
『記念すべき二人のハジメテ☆』がアレじゃ、そりゃ誰でも逃げるわな。