花の名は、ダリア


夢を見ていた。

とてつもなく淫靡で、煽情的で、官能に満ちた夢だった。

天からの最期の贈り物だと思った。
もしくは、最期に自らの願望が見せた幻想だと思った。

夢であっても、もう悔いはないと思った。

なのに…


(…
俺… 生きてンじゃん…)


胸元がはだけた上半身を起こしたソージは、ポリポリと頭を掻いた。

見渡せば…いや、別に見渡さなくても、ココは紛れもなく昨夜の廃寺。

ソージのいる仏殿の奥までは届かないが、壊れた扉からは陽の光が差し込んでいる。

朝だ。

おいおい…

まだ生きてるよ。

『最期』『最期』言っときながら、フツーに目ェ覚ましちゃったよ。

カッコ悪。

へし折られて転がる柱。
一部、崩れ落ちた天井。

どうやら、ソノ辺りは夢ではないらしい。

けれど、ダリアの姿はない。

アノ辺りはやっぱ夢か。

まぁ…仮に現実だったとしても、きっと逃げられてンだろな。

『記念すべき二人のハジメテ☆』がアレじゃ、そりゃ誰でも逃げるわな。


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