花の名は、ダリア

すると彼女は…

迷うように軽く唇を噛んでから、おずおずと近づいてきて。
ソージの前に、膝を抱えてしゃがみ込んで。

しなやかな指で髪を右耳にかけて、上目遣いで、ハイ、一言。


「怒った?」


『死なない』とか、ねェわ。
余裕で萌え死ぬわ。

その可愛さ、神レベル。

彼女の表情一つで、彼女の仕草一つで、彼女の言葉一つで、きっと世界は終わりもするし始まりもするだろう。

ソージは衝動のままダリアの華奢な腰に腕を回し、胡座をかいた膝の上に横抱きに座らせた。


「どうしてダリアが謝るンです?
俺が望んだコトなのに。」


目が優しげに細くなり。
唇が美しい弧を描き。

ソージが微笑む。


「ありがとう、ダリア。
この先…
俺だけが、永遠に貴方の傍にいられるンですね。」


一見、純真な乙女と見紛うばかりの柔らかな笑顔。

けれどその瞳の奥には、獰猛な熱が潜んでいた。

そんなことなど知る由もないダリアは…


「うん!
よかったわ、ソージが怒ってなくて!」


本物の、純真さの結晶のような笑顔で頷いた。

< 90 / 501 >

この作品をシェア

pagetop