花の名は、ダリア

キューケツキ?

ナニソレ?
オイシィの?

時は明治初期。

この国で『吸血鬼』という存在が広く知られるようになるのは、もう少し先の話。

そりゃわかるワケねェよ。

頭上に大量のクエスチョンマークを飛ばすソージを見上げるダリアの瞳が、悪戯そうに煌めいた。


「ハーイ、ダリア先生の『ヴァンパイア講座』を聴きたい人ー?」


ンだよ、その茶番は。

でも、とりあえず乗っとくか?


「は… ハーイ?」


「よろしい。
では、始めます。」


若干顔を引きつらせながら片手を挙げたソージに、ダリアは得意満面で頷いた。


「ヴァンパイアとは、人間の血を吸う不死のバケモノです。
ここで問題。
ヴァンパイアに血を吸われた人間は、どーなるでしょーか?
ハイ、ソージくん。」


「え…と…
ヴァンパイアになる?」


「ブーっ 違います。
答えは『貧血になる』です。
オプションとして、血を吸われた前後の記憶を失います。」


貧血、て。

案外フツーだな、おい。

< 92 / 501 >

この作品をシェア

pagetop