花の名は、ダリア

「ねェ、ソージ。」


元通りになった肩を不思議そうに撫でるソージの手を、身を屈めたダリアがそっと取った。


「私は今すぐにでもこの建物を壊して、ソージを日に曝すことができる。
私はアナタを殺せるの。
アナタは私に従うしかないの。」


「…」


「だから、ねェ。
『穢れし者』を生んではダメよ。」


「…
『穢れし者』って?」


「昨夜の不完全さんが、そうよ。
ヴァンパイアを生み出せない『貴族』が血を与えると、人間は『穢れし者』になってしまうの。」


『穢れし者』は意思も感情もなく、ただ生存本能のみで人間の血肉を求めるアンデッドだと。

狂暴で醜悪だが、それ以上に哀れな被害者だと。

だから、そんなことをすれば許さない、と…

自分の優位を見せつけて、高圧的にダリアは語る。

でもさー…

その、切実な表情と声音。
その、手を握りしめる力。


「これは命令よ。」


『お願いよ』

にしか、聞こえねェよ。

もうそんな顔は見たくない。

涙そのもののようなぺールブルーの宝玉も、見たくない。


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