Would you marry me? 〜年下彼氏と結婚するまで〜
「拓海じゃん!なにやってんの?」
一際元気な声で話しかけてくる、誰か。
「あ。」
王子様が慌てたような素振りをした。
マズイ相手なんだろうか、と声の主を見上げる。
真っ黒な長い髪。
意思の強そうな大きな黒い瞳。
笑うとエクボが片側に出来る、スラリと背の高い女の子。
(あ・・・彼女、かな・・・)
奈落の底に突き落とされそうで踏ん張っていた杏の心を揺るがす、その存在。
「あれ、彼女?早いなぁ〜やっぱり。」
そんな”綺麗”な彼女から発せられた、謎の言葉。
「依里、この人は違うんだ。
・・・バイト先の上司なんだ。みんな。」
若干焦ったような声で王子様はやんわりと否定する。
だよね、否定だよね。
5歳も上の自分では、周りからみても彼女に間違われるような存在じゃない。