小鳥沢2丁目物語
次の日の放課後、わたしは3年3組の教室の前に来ていた。
昨日先輩に呼ばれたから。
先輩はホームルームが終わるとあたしの所にぴょこぴょこと走ってきた。
「あの、昨日はぶつかった上に呼び出してごめんなさい」
「いえいえ、ほんとに気にしなくて大丈夫ですよ!」
ほんとに律儀な先輩だ。
「あの、俺フルートだしスティックとかよくわかんなくて、パーカッションの奴に一緒に選んでもらったんだけど、その、使いづらかったりしたら買い直すからここに連絡ください」
そう言って先輩に渡されたのは、ひとセットのスティックと、小さな紙。
紙には先輩のLINEのIDらしきものが書いてあった。
スティックは...
「back-BOONモデル....!!!」
わたしがこよなく愛するback-BOONというバンドのドラムスティックだった。
「亀谷先輩...!! あなたセンスありますね...!!!」
「あ、いや、あの、吹部のドラムの奴が....」
「ありがとうございますっ!!!」
「いえいえ、喜んでもらえてよかった。じゃあ、あの、練習頑張ってくださいね」
小柄で可愛い感じの先輩の笑顔。
なんだかとっても...眩しかった。