小鳥沢2丁目物語
『アルトイナ〜♪ アルトイナ〜♪』
あと数ミリで唇が触れるか触れないかくらいの所で、あたしの携帯の着メロが鳴った。
さとるは、はっとしたようにあたしの体を思いっきり離した。
...お、お約束...!!!
「ごっ、ごめん!!電話出るね!!」
慌ててパーカーのポケットから携帯を出して電話に出た。
相手はかめたに先輩だった。
「あっ、かめたに先輩?!どうしたんですか??...えっ、第二音楽室開けっ放し?!すみません、職員室にスペアあるんで...はい、お願いしてもいいですか?..はい、ありがとうございます。それでは!」
プツッ
亀谷先輩との電話を切ると、なんとも言えない気持ちに襲われた。
さとる、キス、しようとしてたよね?
...あたしのこと、好き?
って、そんなわけないか。
あたしが考え込んでると、さとるがあたしの頭に手をのせた。
「もう遅いから帰るぞ」
「そうだね!」
...って、おい!
さっきのことはノータッチ?!
あたしも「そうだね!」じゃないよ!!!
そこからの帰り道、あたしたちはただ無言で悶々としたまま旅館についてしまった。