私だけの王子様~真夏の社員旅行~
――トントン
龍平はノックの音にも気付かずにひたすら電話をかけまくっていた。
必死な背中がとても素敵に見えた。
「うっわ!びっくりした。どうしてお前がいるんだよ!!」
本気で驚く龍平の机の上に、差入れのコーヒーとシュークリームを置いた。
「嬉し~!腹減ってたんだ。朝から何も食ってね~んだ。」
龍平は机の上に粉をいっぱいこぼしながら、シュークリームを頬張った。
今までの私なら、そんな龍平を見て、『きもい』なんて思っていたかも知れない。
でも、今の私はそんな龍平をかわいくさえ思えた。
「キャンセル待ちの返事まだないよね。」
「まだ1日しか経ってないからな。そのうちいい返事が来るだろ。」
こんなに美味しいと思ったシュークリームは初めてだった。
なんだかわからないけど、
普段は食べることのない会社の机で食べたシュークリームはとても美味しかった。