私だけの王子様~真夏の社員旅行~
その時、会社の電話が鳴った。
「はい!わかりました!ありがとうございます!!」
電話を切った龍平は立ち上がり、私の腕を引っ張って私を立たせた。
「やった!!キャンセル出たって!一番俺が気に入ってたペンション!良かったー!」
「やった!!ほんとに?やったーーー!!」
犬猿の仲の犬と猿が、抱き合って、くるくると回りながら、喜びを分かち合った。
「良かった。実は結構不安だったんだよね、俺。」
「本当にありがとう!龍平のおかげだね。」
自分達が抱き合っていることに気付いて、ハッとして私と龍平は離れた。
「ごめん… あのさ、もし良かったら、俺と付き合って欲しい。俺、お前と一緒にいるの楽しいから、ずっと一緒にいて欲しいんだ。」
「私もあんたと一緒にいると楽しい。ムカつくけど、なんかあんたと話してると笑ってばかりだもん。でも、龍平が私の王子様だったなんてね。」
「何だよ、王子様って。」
「何でもない!」
私に舞い降りた王子様は、私が思い描いていた王子様とはかけ離れていたけれど、
きっととても素敵な王子様。
私の初恋は、思いも寄らぬところに転がっていた。