月のうさぎ~寒がりな天使~
翌日、俺はなかなか言い出せなかった自分の仕事のミスを上司に報告した。
総務部に、異動してきたばかりの荒海部長。
大阪支店からの転勤で、見た目はすごく怖そうなんだけど、話すと大阪弁でフレンドリーな人だった。
「高橋、なかなか報告けーへんからおかしいと思っててん。ミスはミスとして、また次につなげればいいから。」
夏休み前までいた上司とは全く違った反応だった。
以前の上司は人のミスを大声で指摘し、イヤミを言い、部下のやる気を失くさせるのが得意だった。
有希子という天使が、俺に幸福をもたらしてくれた。
俺は、この仕事を好きになれそうだと感じた。
やりたかった仕事ではないが、ここで出会った相川先輩も、この荒海部長も俺の尊敬できる人だった。
仕事よりもそこで一緒に仕事をする仲間が俺にとっては大事なんだ。