月のうさぎ~寒がりな天使~
「好きになったけど、付き合うことはできないんだ。ごめん、許して。」
エレベーターがいつもより早く感じる。
ゆっくり動いてくれと願った。
「どうして?何か付き合えない理由があるのか?」
俺と有希子は、エレベーターの階数を示すランプをじっと見ていた。
「ごめんね。私、来月から留学するんだ。海外で、服飾のデザインの勉強するの。だから、恋なんてしてる場合じゃないんだ。」
1階に着き、台車に段ボールを乗せた。
信じられなくて、何も言えなかった。
留学してもいい、それでも俺は有希子が好きだ、と思っているのに口から出なかった。