月のうさぎ~寒がりな天使~


4月。


慣れない仕事に疲れていた俺。


5時のチャイムが何よりも嬉しかった。


仕事が終わるチャイムと共に、元気な声が聞こえた。


「おつかれさまでーす!!」



その女の子は、灰色に赤いラインの入った上下同じ柄の服を着て、

俺に向かって微笑みかけた。


「時間指定はありますか?」



彼女はそう言って、緊張気味の俺の顔を覗きこむ。



「は、はい。あの、午前中指定にしてください。」



俺を新入社員だと理解した彼女は言った。



「私もまだ新人なんです。お互い頑張りましょうね!」




彼女の細い腕が折れてしまうんじゃないかと心配してしまうほどの

重そうな荷物を抱えて、エレベーターのボタンを押した。



俺は追いかけて、エレベーターの扉が閉まらないように、扉を押さえた。



本当は荷物を持ってあげたかったくらいだ。



「ありがとうございます!!助かります!」



彼女は爽やかにそう言うと、エレベーターで下へ降りた。






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