俺の隣 ~ルームウェアに込めた想い~
「ただいま・・・」
由香は、台所で料理をしていた。
その後ろ姿を見ていると、また寂しくて泣きそうになった。
「おかえり」
由香は、優しく微笑んで、俺の手に持ったケーキを見た。
「珍しいね。ケーキ買ってきてくれたの?」
「あぁ、今日、会社休んだのか?大丈夫?」
俺達は、何事もなかったかのように会話をしていた。
別れるってこんなにも辛いんだ。
別れるって・・・相手とのたくさんの思い出を一つずつ、過去にしていかなくちゃいけない。
簡単に別れるなんて・・・できないよ。
『別れようか』と口にしてしまった自分の愚かさに涙が出る。
由香は、俺の好きなクリームシチューを作っていた。
冷蔵庫で冷やしてくれていたビールをグラスに注ぎ、乾杯をした。
お互い口には出さないが、最後の食事だってわかっていた。
だから、楽しい話ばかりして、お互いのことを褒めあったりした。