聖なる夜の奇跡~身分違いの恋~
「おはよう!河野さん!」
エレベーターの前で声をかけてきたのは、玉巻俊也。
この社内で唯一、恋の相談のできる相手だった。
「寒いね~!」
元気のない私を気遣ってか、彼はいつも笑顔で話しかけてきて、私の顔色をうかがう。
「今日は、ちょっと元気だね。」
彼とは、こうしてエレベーターで話すだけの関係だった。
「俺さ、彼女とやり直したんだ!」
「そうなの!?おめでとう!」
おめでとうと言いながら、ほんの少し寂しさを覚えた。
彼に対して、恋愛感情はないが、この会社の中で一番安心して話せる人だった。
心のどこかで彼に頼りたいと思っていた自分に気付いた。
恋愛に疲れていたのかもしれない。
大介を愛しているけれど、このまま愛し続けることがあまりにも苦しかった。
私は玉巻俊也に助けて欲しいと思っていた自分が情けなくなり、ため息をつく。
「まぁ、頑張れや!河野さんも!」
私の肩をポンっと叩き、エレベーターを降りた。