拝啓 芦田くん
あの時の、私の衝撃。その衝撃を、どう言葉にしたらいいのか分かりません。
あなたはその、耳に空いた真新しいホールを、自慢するでもなく隠す訳でもなく、ごく自然に振る舞っていて、私に質問をさせる隙すら与えてくれませんでした。
そうして二度目のその日、三度目のその日。あなたの耳たぶには、新しい輝きが増えていったのです。
明日、四度目のその日が来ます。
私がこの一年、何を考えて過ごしていたか、あなたにはお分かりてしょうか。分かりませんよね。分からないでしょう。
何よりも痛みを嫌う私の事です。まさか、あなたの意志を継いでピアスの穴を開けるだなんて、想像もしていなかったでしょう。私自身にすら、未だに信じられないのです。
けれども、芦田くん。私の耳たぶには、確かな四つの痛みがあります。(いくらなんでも四つも同時に開けるなんて馬鹿ですよね。馬鹿なんです。私もあなたと同じくらいに)耳は真っ赤になって、膨れ上がっています。(このままこんな耳になってしまうんじゃないかしら)
そうしてこの痛みは、あの時と同じくらいの、いえ、それ以上の、寂しさを伴っています。
芦田くん。
私はこれ以上、私の愛するあなたの耳が、いくつものホールでボコボコになって、変形していく様など見たくはないのです。あなたの耳は、ただ音を聞き取るためだけに、美しく花弁の様に開いているのです。私達は、私達の耳の、健全を守る義務があるのです。
ですから、芦田くん。このピアッサーは、お土産として私がここから持ち去って行きます。探さないで下さい。この終わりのない痛みは、私が責任を持って処分いたします。
私は私の、あなたは、あなたの耳を、未来を、愛していかなければならないのですから。
芦田くん、けれど、私は悲しくなんかないのです。この目が、何となく潤んでいるような気がするのも、きっと、耳の痛みのせいなのでしょう。
ああ、痛い。痛くて、当分、お風呂にも入れそうにない。
最後になりましたが、芦田くん。冷蔵庫のキムチは賞味期限か迫っているので早く食べた方がいいでしょう。納豆は、冷凍庫にしまっておきました。(食べる前の日に、冷蔵庫に出しておくといいですよ)
いつか本屋さんで、あなたの名前を見付けることを、本当に楽しみにしています。その時は、誰かに自慢してもいいかな。
あなたが、いつまでもあなたである事を、あなたの耳が、いつまでも美しくある事を、私は心から、祈っています。
愛を込めて。
あなたはその、耳に空いた真新しいホールを、自慢するでもなく隠す訳でもなく、ごく自然に振る舞っていて、私に質問をさせる隙すら与えてくれませんでした。
そうして二度目のその日、三度目のその日。あなたの耳たぶには、新しい輝きが増えていったのです。
明日、四度目のその日が来ます。
私がこの一年、何を考えて過ごしていたか、あなたにはお分かりてしょうか。分かりませんよね。分からないでしょう。
何よりも痛みを嫌う私の事です。まさか、あなたの意志を継いでピアスの穴を開けるだなんて、想像もしていなかったでしょう。私自身にすら、未だに信じられないのです。
けれども、芦田くん。私の耳たぶには、確かな四つの痛みがあります。(いくらなんでも四つも同時に開けるなんて馬鹿ですよね。馬鹿なんです。私もあなたと同じくらいに)耳は真っ赤になって、膨れ上がっています。(このままこんな耳になってしまうんじゃないかしら)
そうしてこの痛みは、あの時と同じくらいの、いえ、それ以上の、寂しさを伴っています。
芦田くん。
私はこれ以上、私の愛するあなたの耳が、いくつものホールでボコボコになって、変形していく様など見たくはないのです。あなたの耳は、ただ音を聞き取るためだけに、美しく花弁の様に開いているのです。私達は、私達の耳の、健全を守る義務があるのです。
ですから、芦田くん。このピアッサーは、お土産として私がここから持ち去って行きます。探さないで下さい。この終わりのない痛みは、私が責任を持って処分いたします。
私は私の、あなたは、あなたの耳を、未来を、愛していかなければならないのですから。
芦田くん、けれど、私は悲しくなんかないのです。この目が、何となく潤んでいるような気がするのも、きっと、耳の痛みのせいなのでしょう。
ああ、痛い。痛くて、当分、お風呂にも入れそうにない。
最後になりましたが、芦田くん。冷蔵庫のキムチは賞味期限か迫っているので早く食べた方がいいでしょう。納豆は、冷凍庫にしまっておきました。(食べる前の日に、冷蔵庫に出しておくといいですよ)
いつか本屋さんで、あなたの名前を見付けることを、本当に楽しみにしています。その時は、誰かに自慢してもいいかな。
あなたが、いつまでもあなたである事を、あなたの耳が、いつまでも美しくある事を、私は心から、祈っています。
愛を込めて。