世界にイロを
第一章
つぼみside
『あっち行ってよ!』
『化け物は人間のとこに来ないで!』
(化け物…?私が何をしたの?)
『死んじゃえよ』
「…ッイヤァ!」
目を開けると見慣れた私の部屋の天井。
「…夢?」
よかった、と胸を撫で下ろした時、バタバタと廊下を駆ける足音。
「どうしたのつぼみ‼︎」
バタン‼︎‼︎
と豪快な音を立てて開いた扉。
焦ったような顔をして私を見つめているのは幼馴染の播磨 幸(ハリマ コウ)。
「…なんでも、ない」
「…そう?なら、いいけど…なんかあったら言いなよ」
私のベットの端に腰掛け、そっと頭を撫ぜてくれる手が優しい。
(…そっか。この家にはコウが居るんだ)
龍山 つぼみ(タツヤマ ツボミ)。それが私の名前。
赤いの瞳に銀色の長い髪。異色の人間と呼ばれ蔑まれてきた。
この世界は皆髪と瞳は黒色だ。
けど稀に黒以外の髪と瞳を持って生まれて来るものが居る。
それが異色だ。異色だとわかった瞬間、髪を染めカラコンを入れさす親と虐待する親との2種類に分かれる。私は後者だ。けどコウがこの髪色は綺麗だと言ってくれたから背中の真ん中あたりまで伸ばした髪はストレートだ。
両親が死に独りっ子だった私はこの広い屋敷に独りだった。
…昨日までは。
幼馴染のコウが独りじゃつぼみも寂しいでしょ?と言ってこの家に住むようになったんだ。
コウと私の部屋は隣。きっと私の悲鳴に飛び起きて慌てたんだろうな。
「ありがとう」
「ん。どういたしまして」
独りに慣れてしまった私は甘え方を忘れた。
両親が居た頃もいい事なんてなかった。
学校ではイジメられ、家に帰れば殴られ怒鳴られ蹴られる。夜になって父親に襲われる。
両親が死んだ時、涙なんて一滴も出なかった。逆に嬉しかった。
学校でのイジメは無くならなかったけど家は安らぎの場となった。学校は不登校気味。
コウと初めて同じクラスになった時コウが助けてくれた。
『…やめろよ、つぼみをイジメるなよ。
つぼみは化け物じゃない!化け物なのはお前らだ!人をイジメて平気な顔で居られるお前らこそが化け物だ!』
その言葉を思い出すと思わず笑みが零れる。
「ん?つぼみ、どうしたの?」
「あぁ、なんでもないよ。昔の事を思い出してただけ」
「そっか」
「コウ」
「ん〜?」
「ありがとう」
「いーえ」
コウは私のことを心配してくれる。
「4時かぁ。目冴えちゃったね。つぼみは寝れる?」
「んーん。私も目冴えちゃった。」
「じゃぁ…散歩でも行く?」
夏休みが始まってから一ヶ月、その間外に出てない。
「…ひさしぶりに、外行こうかな」
「ホント⁈じゃぁ一緒に行こう!僕着替えてくる!」
コウは満面の笑みを浮かべてスキップしながら自分の部屋へと戻って行った。
長袖のパーカーを羽織り、ジーパンを履く。
極度の寒がりな上、肌を出すのが嫌いだからいつも長袖長ズボン。
「…またつぼみはそんな格好して。
暑くない?」
「うん。大丈夫」
「お茶持って行っとくから喉乾いたら言ってよ」
「うん」
「よし、じゃぁ出発‼︎」
当たり前のように手を握ってくれる。
私に触れたがる人は居なかったからひどく懐かしく、暖かく感じる。
キュッと握り返すとコウは笑ってくれた。
「つぼみ、僕海行きたいな」
「今から?」
「うん。きっと朝日が綺麗に見れるよ」
「…行く」
「よし、行こう。こっから少しだけ遠いよ、歩ける?」
…歩けるかな。久々の外だし、体力もない。
「…うん。コウが居るからきっと歩ける」
「そっか。じゃぁ行こっか。
いーい?つぼみ。無理はしないって約束してくれる?」
「うん。する」
「いい子」
コウはいつも私の面倒を見てくれた。
私の大事な幼馴染。
そんなコウにいつのまにか私は惹かれてた。
「………っあ‼︎つぼみ、波の音が聞こえる‼︎あと、あと少しみたい」
「ホントだ、聞こえる」
「走る?」
「うん、走る‼︎」
私の声を合図に私達は走り出す。
コウが私の手を離さないでいてくれる。それだけのことが嬉しくて。
「つぼみ、早く」
「待ってよ、コウ早い」
「つぼみが遅いよ」
海に着いた時、2人は肩で息をしていた。砂浜に座り、顔を見合わせ笑った。
その時、朝日が昇る。
「…」
「‼︎」
2人とも、言葉を失う。それほど、綺麗だった。
「綺麗…」
「うん。ホントだね」
離れそうだった手をコウが握る。私も握り返す。
「つぼみ、今どんな気持ち?」
「…来て、よかったって思ってる」
「よかった。僕もつぼみと同じこと考えてた。
…ぇ?つぼみ、泣いてるの?」
「泣いて、ない」
コウから顔を背け、俯く。
初めて言われたんだ。つぼみと同じこと考えてた、なんて
「つぼみ」
「…初めて言われたんだ」
「うん」
「…私、嫌われるのに慣れてて、独りに慣れてたから、好かれるのも、隣に誰か居るのも初めてで。」
「うん」
「……だから、凄い今嬉しいんだ。けど、同時に不安でもある。」
「大丈夫だよ、僕は裏切らないよ。それに、嫌われるのに、独りに慣れたなんて言わないで、そんなことに慣れないで」
「わかった。…コウ、泣いてるの?」
「つぼみがそんなことに慣れるから。それなのに、泣かないから代わりに泣いてるんだよ」
「…ありがと」
コウは笑顔を向けるとまだオレンジに染まる海を見る。
「ゴメンね、つぼみ。」
「…なんで謝るの?」
「僕つぼみに隠してたことがあるんだ」
「…うん」
「僕…」
コウはそこで言葉を切り私の瞳を見る。
「…………僕も、異色なんだ」
「…ぇ?だって、目や髪の色が…‼︎」
「染めたんだ。目はカラコン」
コウは笑って、カラコンを取る。
…コウの瞳はこの、朝日のような綺麗な橙色だった。
「今日ヘアカラー落とすんだ。」
「なんで?」
「つぼみに打ち明けたから」
コウの髪は何色なんだろう。
「僕が異色でも、つぼみは避けない?」
「避けるわけ無いでしょ」
「…よかった」
コウはまた、海を見る。
「僕ね、夢があるんだ」
「…夢?」
「うん。作曲家。皆の心に響くような歌を作るんだ。」
「…コウなら、なれるよ!頑張れ」
「うん、頑張る。
…つぼみは?つぼみの夢は?」
「私…
私の夢は…空の上に行きたい」
「…それって、死?」
「…わかんないけど、きっとそう。
何年も先だろうけど」
「僕、何十年も先じゃないとヤダよ」
「私もそうじゃないとヤダな。コウの歌聞きたいもん」
「…じゃぁ、つぼみが歌ってよ。僕が歌を作ってつぼみが歌う」
「私が?」
「うん‼︎つぼみは声綺麗だし可愛いし。」
「…仮にそうだとしても、見た目が」
「つぼみはね、髪の毛セットするだけで皆が目を見張るほどの美人だよ」
「…」
「今、作りかけの曲があるんだ。出来たら歌ってくれる?」
「…うん。」
「作詞する?僕文章は苦手でさ」
「作詞…したいな」
「うん、じゃぁしよっか。家に帰ったら曲聴こっか」
「一緒に聴こ」
「うん。
じゃぁ、そろそろ帰ろう」
砂を払って立ち上がり2人並んで歩き出す。
(独りじゃないってこんなにいいんだ)
「コウ」
「ん?」
「独りじゃないっていいね」
「‼︎うん、でしょ?」
「もう独りはイヤだ」
「僕が居るよ」
「もうちょっと、待って。いつか、必ず全部話すから」
「話したくなかったら話さなくてもいいんだよ?」
「私が話したい。コウも、話してくれたから」
「…そっか。じゃぁ僕、いつまでも待ってるね」
「うん…」
「コウ」
「ん?」
「私の夢が叶う時、コウは側に居てくれる?」
「…モチロンだよ!つぼみを置いていかないからね」
手を繋いだ影法師が二つ並ぶ。目に焼き付けると、コウの手をギュッと握った。
『化け物は人間のとこに来ないで!』
(化け物…?私が何をしたの?)
『死んじゃえよ』
「…ッイヤァ!」
目を開けると見慣れた私の部屋の天井。
「…夢?」
よかった、と胸を撫で下ろした時、バタバタと廊下を駆ける足音。
「どうしたのつぼみ‼︎」
バタン‼︎‼︎
と豪快な音を立てて開いた扉。
焦ったような顔をして私を見つめているのは幼馴染の播磨 幸(ハリマ コウ)。
「…なんでも、ない」
「…そう?なら、いいけど…なんかあったら言いなよ」
私のベットの端に腰掛け、そっと頭を撫ぜてくれる手が優しい。
(…そっか。この家にはコウが居るんだ)
龍山 つぼみ(タツヤマ ツボミ)。それが私の名前。
赤いの瞳に銀色の長い髪。異色の人間と呼ばれ蔑まれてきた。
この世界は皆髪と瞳は黒色だ。
けど稀に黒以外の髪と瞳を持って生まれて来るものが居る。
それが異色だ。異色だとわかった瞬間、髪を染めカラコンを入れさす親と虐待する親との2種類に分かれる。私は後者だ。けどコウがこの髪色は綺麗だと言ってくれたから背中の真ん中あたりまで伸ばした髪はストレートだ。
両親が死に独りっ子だった私はこの広い屋敷に独りだった。
…昨日までは。
幼馴染のコウが独りじゃつぼみも寂しいでしょ?と言ってこの家に住むようになったんだ。
コウと私の部屋は隣。きっと私の悲鳴に飛び起きて慌てたんだろうな。
「ありがとう」
「ん。どういたしまして」
独りに慣れてしまった私は甘え方を忘れた。
両親が居た頃もいい事なんてなかった。
学校ではイジメられ、家に帰れば殴られ怒鳴られ蹴られる。夜になって父親に襲われる。
両親が死んだ時、涙なんて一滴も出なかった。逆に嬉しかった。
学校でのイジメは無くならなかったけど家は安らぎの場となった。学校は不登校気味。
コウと初めて同じクラスになった時コウが助けてくれた。
『…やめろよ、つぼみをイジメるなよ。
つぼみは化け物じゃない!化け物なのはお前らだ!人をイジメて平気な顔で居られるお前らこそが化け物だ!』
その言葉を思い出すと思わず笑みが零れる。
「ん?つぼみ、どうしたの?」
「あぁ、なんでもないよ。昔の事を思い出してただけ」
「そっか」
「コウ」
「ん〜?」
「ありがとう」
「いーえ」
コウは私のことを心配してくれる。
「4時かぁ。目冴えちゃったね。つぼみは寝れる?」
「んーん。私も目冴えちゃった。」
「じゃぁ…散歩でも行く?」
夏休みが始まってから一ヶ月、その間外に出てない。
「…ひさしぶりに、外行こうかな」
「ホント⁈じゃぁ一緒に行こう!僕着替えてくる!」
コウは満面の笑みを浮かべてスキップしながら自分の部屋へと戻って行った。
長袖のパーカーを羽織り、ジーパンを履く。
極度の寒がりな上、肌を出すのが嫌いだからいつも長袖長ズボン。
「…またつぼみはそんな格好して。
暑くない?」
「うん。大丈夫」
「お茶持って行っとくから喉乾いたら言ってよ」
「うん」
「よし、じゃぁ出発‼︎」
当たり前のように手を握ってくれる。
私に触れたがる人は居なかったからひどく懐かしく、暖かく感じる。
キュッと握り返すとコウは笑ってくれた。
「つぼみ、僕海行きたいな」
「今から?」
「うん。きっと朝日が綺麗に見れるよ」
「…行く」
「よし、行こう。こっから少しだけ遠いよ、歩ける?」
…歩けるかな。久々の外だし、体力もない。
「…うん。コウが居るからきっと歩ける」
「そっか。じゃぁ行こっか。
いーい?つぼみ。無理はしないって約束してくれる?」
「うん。する」
「いい子」
コウはいつも私の面倒を見てくれた。
私の大事な幼馴染。
そんなコウにいつのまにか私は惹かれてた。
「………っあ‼︎つぼみ、波の音が聞こえる‼︎あと、あと少しみたい」
「ホントだ、聞こえる」
「走る?」
「うん、走る‼︎」
私の声を合図に私達は走り出す。
コウが私の手を離さないでいてくれる。それだけのことが嬉しくて。
「つぼみ、早く」
「待ってよ、コウ早い」
「つぼみが遅いよ」
海に着いた時、2人は肩で息をしていた。砂浜に座り、顔を見合わせ笑った。
その時、朝日が昇る。
「…」
「‼︎」
2人とも、言葉を失う。それほど、綺麗だった。
「綺麗…」
「うん。ホントだね」
離れそうだった手をコウが握る。私も握り返す。
「つぼみ、今どんな気持ち?」
「…来て、よかったって思ってる」
「よかった。僕もつぼみと同じこと考えてた。
…ぇ?つぼみ、泣いてるの?」
「泣いて、ない」
コウから顔を背け、俯く。
初めて言われたんだ。つぼみと同じこと考えてた、なんて
「つぼみ」
「…初めて言われたんだ」
「うん」
「…私、嫌われるのに慣れてて、独りに慣れてたから、好かれるのも、隣に誰か居るのも初めてで。」
「うん」
「……だから、凄い今嬉しいんだ。けど、同時に不安でもある。」
「大丈夫だよ、僕は裏切らないよ。それに、嫌われるのに、独りに慣れたなんて言わないで、そんなことに慣れないで」
「わかった。…コウ、泣いてるの?」
「つぼみがそんなことに慣れるから。それなのに、泣かないから代わりに泣いてるんだよ」
「…ありがと」
コウは笑顔を向けるとまだオレンジに染まる海を見る。
「ゴメンね、つぼみ。」
「…なんで謝るの?」
「僕つぼみに隠してたことがあるんだ」
「…うん」
「僕…」
コウはそこで言葉を切り私の瞳を見る。
「…………僕も、異色なんだ」
「…ぇ?だって、目や髪の色が…‼︎」
「染めたんだ。目はカラコン」
コウは笑って、カラコンを取る。
…コウの瞳はこの、朝日のような綺麗な橙色だった。
「今日ヘアカラー落とすんだ。」
「なんで?」
「つぼみに打ち明けたから」
コウの髪は何色なんだろう。
「僕が異色でも、つぼみは避けない?」
「避けるわけ無いでしょ」
「…よかった」
コウはまた、海を見る。
「僕ね、夢があるんだ」
「…夢?」
「うん。作曲家。皆の心に響くような歌を作るんだ。」
「…コウなら、なれるよ!頑張れ」
「うん、頑張る。
…つぼみは?つぼみの夢は?」
「私…
私の夢は…空の上に行きたい」
「…それって、死?」
「…わかんないけど、きっとそう。
何年も先だろうけど」
「僕、何十年も先じゃないとヤダよ」
「私もそうじゃないとヤダな。コウの歌聞きたいもん」
「…じゃぁ、つぼみが歌ってよ。僕が歌を作ってつぼみが歌う」
「私が?」
「うん‼︎つぼみは声綺麗だし可愛いし。」
「…仮にそうだとしても、見た目が」
「つぼみはね、髪の毛セットするだけで皆が目を見張るほどの美人だよ」
「…」
「今、作りかけの曲があるんだ。出来たら歌ってくれる?」
「…うん。」
「作詞する?僕文章は苦手でさ」
「作詞…したいな」
「うん、じゃぁしよっか。家に帰ったら曲聴こっか」
「一緒に聴こ」
「うん。
じゃぁ、そろそろ帰ろう」
砂を払って立ち上がり2人並んで歩き出す。
(独りじゃないってこんなにいいんだ)
「コウ」
「ん?」
「独りじゃないっていいね」
「‼︎うん、でしょ?」
「もう独りはイヤだ」
「僕が居るよ」
「もうちょっと、待って。いつか、必ず全部話すから」
「話したくなかったら話さなくてもいいんだよ?」
「私が話したい。コウも、話してくれたから」
「…そっか。じゃぁ僕、いつまでも待ってるね」
「うん…」
「コウ」
「ん?」
「私の夢が叶う時、コウは側に居てくれる?」
「…モチロンだよ!つぼみを置いていかないからね」
手を繋いだ影法師が二つ並ぶ。目に焼き付けると、コウの手をギュッと握った。