世界にイロを
「暑ぅ…」
さすが8月。太陽なめてたよ。ごめん太陽、なんて心の中で謝る。これで機嫌を直して雲の後ろに隠れてくれたらいいのに。
「タツミ、暑くない?」
「あぁ、別に」
サラッと答えたタツミは確かに暑くなさそうだ。汗もかいてないし。なんかタツミの周りだけクーラーがあるみたい。
「俺戻りたい…」
「よっ、さっすが引きニート‼︎」
「黙れよハリー!つかお前まで俺をからかうのかよ‼︎」
「だってーリョクタローくんからかうの面白んだもん」
「うるせぇ」
「タツミィリョクタローくんがうるせぇって言ったぁー‼︎」
どさくさに紛れて抱きつこう作戦‼︎タツミに抱きつこうと手を伸ばす。
「黙れよ」
「ぐふっ‼︎」
鳩尾に蹴りを一発入れられた。
「タツミィ痛いよぉ…」
「知るか」
歩く足を止めない皆。慌てて追いかける。
タツミの横に並んで歩く。
「酷いなぁタツミ。つぼみの時は僕によく泣きつ痛い痛い痛い痛い‼︎」
昔を思い出しながら語っていたら僕の脇腹を抓られた。
「…バカなことを言うな」
少し顔を赤くして呟いたタツミ。
ヤバイ可愛い何これ可愛い…
「…なぁ、あれなんだ?」
可愛いなぁタツミは。
「おい、なんかこっち来るぞ!」
「えっ⁈なんだあれ⁈」
「知らねぇ!とにかくここから逃げるぞ‼︎」
あれ?皆なにして…
「バカッ‼︎」
グイッと引っ張られ僕は何かの上に倒れ込む。
そして僕がさっきまで立っていたところをたくさんの人が通ってく。
…なんだろうあれ。新しい宗教団体?
そういえばなんの上に乗っかってるんだろ。
パッと視線を移せば僕の下にはタツミ。こっちを物凄い顔で睨んでいる。
「バカッ何ぼうっと突っ立ってたんだ‼︎あそこで俺が引っ張ってなきゃお前踏まれてたぞ‼︎」
「うぇっ⁉︎そうなの⁈いやぁありがとう助かったよタツミ♪」
「わかったらさっさと退け。」
「えぇーもうちょっとこのままで痛い痛い‼︎わかったすぐ退きます‼︎」
慌ててタツミの上から退く。
痛いなぁ、さっきから同じ場所狙ってるよ。
「っぅ‼︎」
「?タツミ?」
「っいや、なんでもない。」
とか言いつつ顔は何かに耐えるように歪んでいる。
タツミの体全体を見て気付く。足を抑えてる?
「タツミ…足、どうしたの?」
「いやなんでもない!ただ…そう、痒かっただけだ!」
「見せて」
左足首を隠す手を退けズボンの裾を捲ると真っ赤に腫れ上がった痛々しい足首。
普段はあんなに白くて細い足首が今は赤くて腫れている。
「タツミ…」
「これくらい大丈夫だ。歩ける」
「ダメ、一旦帰るよ」
「これくらい「ゴメンね。僕がぼうっとしてなかったらタツミにこんな怪我させなかったのに…」
僕のせいだ。タツミを守りたいのに守られて、挙げ句の果てに怪我までさせるなんて。
「ハリー、私緊急セット持ってるよ!」
「ミオンホント⁈」
「うん!ポシェットにね、入ってるの。
そこのベンチで手当てしよう。」
「タツミ、乗って」
タツミの前にしゃがむ。
「歩ける」
そう言って立とうとするけど痛むのか途中でやめてしまった。
立てないんじゃおんぶは無理だなぁ。
「タツミ、ちょぉっとだけ我慢してね」
タツミの背中と膝の下に腕を入れ、持ち上げる。
「なっ‼︎降ろせバカ!」
「いーじゃんこの前もお姫様抱っこしたでしょー」
「俺は歩ける!降ろせっ!この程度の怪我でっ、っぅ‼︎」
「ほら暴れるからー。もうすぐベンチだから大人しくして」
前も思ったけど、なんでこんなに軽いんだろ。
ベンチに降ろしてタツミの頭を撫ぜる。
「無理なんてしないでさ。甘えなよ」
「…」
「タツミ、靴脱がすよ?」
「自分でするよ、それくらい」
若干ふてくされてるけど自分で靴を脱いだ。
「えっと、捻挫だね。捻挫に必要なもの……あ、これが必要だよね…あれ、薬どこ行ったかなぁ?あっ、あった!擦り傷もちょっとだけあるから消毒して絆創膏貼ろっか。あれぇ絆創膏…あれ?どこかなぁ。確かまだあるはず…あ、消毒液。あれ絆創膏…絆創膏…」
ミオンはポシェットの中のものを出しながら絆創膏を探し出した。
「あったぁ‼︎」
「み、ミオン…これ全部そのポシェットに入ってたのか…?」
「?うん。」
僕もビックリだよ。いやむしろビックリしてないのはミオンくらい。
四人は座れるベンチにミオンのあの小さなポシェットに入ってたもの全て並んだらもう誰も座れないくらいだから。
「まだいくつか入ってるよ?」
「お前それ…四次元ポケットか?」
「やだ、タツミったら。これはポケットじゃないよポシェットだよぉ」
笑いながらミオンはしまっていく。
ぽんぽんと投げ込まれていく中、ポシェットはパンパンにならずに空っぽのときのよう。
よーし、と意気込んでミオンは手当てを開始する。
「ちょっと痛いかも…」
「いっ‼︎」
ミオン、ぽんぽんしてたら痛いと思うよ…
「ぃっつぅっ…」
「包帯巻くね」
ミオンは手際良く手当てをしていく。
「擦り傷も消毒するよ?染みるかも」
「っ」
よほど染みたのかタツミの眉間にシワがよる。
「眉間にシワ寄せたらせっかくの美人が台無しだよ?」
僕がタツミの眉間のシワを指で伸ばすとタツミはみるみるうちに赤くなる。
「うっ…うるさい‼︎」
「きゃぁぁタツミ暴れないでぇ‼︎」
「はっ…すまん」
「はい、完成!どぉ?」
「だいぶ痛みは取れたよ。ありがとなミオン」
「よかったぁ。えへへ」
タツミがミオンの頭を撫ぜる。ミオンは嬉しそうに笑った。
「すまんな皆。待たせた。よし買い物行くか」
「団長サン、もう大丈夫なんですか?」
「あぁ。」