世界にイロを
「さすが休日。賑わってるねー」
今日はハリーとハリーのお母さんと一緒にデパートに買い物に来ている。
「今日は何買うの?」
「えっとー。ミオンのプレゼントでしょ?次の曲に合う衣装でしょ?あ、ミオンの衣装も買わなきゃなんだった!」
「もーまた?コウはいつも大事なところ抜けてるんだから」
「あの、おばさん。異色2人も連れて歩いてたらおばさんの評判が落ちないか…?」
「あらやだつぼみちゃん、そんなの気にしないで。さ、買い物しましょ!」
おばさんは微笑む。
「タツミ、気にしないで。僕のお母さんは世間体なんて気にしないからね」
「それに私おばさんって年じゃないわ。だってまだ37歳よ?」
「おばさんじゃん」
「ん?コウ何か言った?」
「べーつーに?」
「あの、じゃぁ何て呼べば…」
「そーね。アイラさんって呼んで?」
「…アイラさん」
「そーよ。」
アイラさんは俺の頭を撫ぜる。
「よーし、じゃぁまずミオンへのプレゼント買おー♪」
店内をウロウロする。
「あ…」
ふと目に入ったのは白いウサギのぬいぐるみ。
ミオンに似てる。可愛い
「んー?タツミ?どしたの?
あっ、これミオンに似てるね」
「だろ?俺もそう思ったんだ」
「これにする?」
「俺はこれがいいと思う」
「じゃぁこれにしよっ!僕もこれがいいと思うしね。
お母さーん決まったー」
「もう?どれにするの?
あら可愛い!いいと思うわよ」
そう言うとアイラさんはそのぬいぐるみをレジに持っていく。
「あ、アイラさん、俺が払う!」
「いーのよ。子供は大人に甘えときなさい」
アイラさんに頭を撫ぜられると心がポカポカする。けど迷惑をかけてしまった。
「…ごめんなさい」
「あら、こういうときはごめんなさいじゃなくてありがとうって言うのよ!
全然迷惑なんかじゃないんだからね。私のお節介なんだから」
「……あり、ありがとう」
顔を上げ、アイラさんの目を見て言えばアイラさんは満足気に笑ってくれた。
「僕ミオン迎えに行ってくるからお母さんとタツミはそこのカフェでお茶して待っててね」
「はーいいってらっしゃい」
「ハリー、俺も行く」
「タツミは待っててね」
ハリーは俺の頭を撫ぜて走り出す。人混みに紛れて行く背中を追いかけようとした時、アイラさんに手を掴まれる。
「あの子が行くって言ってるんだから大丈夫よ。ほら、コウって自分が面倒だと思ったことは決してやるなんて言わないの、知ってるでしょ?」
「………知ってる。けど「ほら、お茶しましょ」
「…うん」
カフェに入り俺はレモンティーを、アイラさんはコーヒーを注文する。
「ねぇ、つぼみちゃん?」
「なんだ?」
「どうしてコウはハリーでつぼみちゃんはタツミなの?」
「…俺たち、バンドをしてるんだ」
「バンド?ミオンちゃんもじゃぁそのメンバー?」
「あぁ。正義のヒーロー、“Colors”。団長は俺でタツミ。ボーカルだ。
団員No.2、ハリー。キーボード。
団員No.3、ミオン。ハリーと同じくキーボードだ。
タツミは龍山のタツとつぼみのミを取ってタツミ。
ハリーは播磨だから。
ミオンは美桜のミと詩音のオンでミオンなんだ。
このマフラーは団員の証だ。瞳の色のマフラーに髪の色のステッカー。俺の手作りだ。」
「そっかー。バンドか。凄いじゃない、ボーカルなんて。私もタツミの歌聴きたいわ。」
「作曲はハリーで作詞が俺なんだ」
「あら!凄いわねー。私もColorsに入れて頂戴?資金担当よ」
「そんな!アイラさんに悪いし」
「私は自分の損になるような提案はしないわ。後で自分の首を締めることになるからね。
私が貴方たちを資金面で支える。そして私は完成した貴方たちのステージを見る。」
「そんなの俺たちばかりが得をしているじゃないか!」
「コウは私の大事な息子よ。つぼみちゃん、貴女も私の娘みたいなものなの。もちろん、シオンちゃんもね。
親が子供を支え、子供の活躍を見たいと思うのはイイでしょう?」
「……それでアイラさんは得をするのか?」
「えぇ!モチロン」
「なら、その提案に乗らせてもらう」
俺が顔を上げて言うとアイラさんは笑う。
「そう来なくっちゃ‼︎」
「お待たせー。ミオン連れて来たよーん」
「は、初めまして、み、み、ミオンです…」
ミオンもハリーもちゃんと団員の証であるマフラーをしてくれてる。
嬉しい。
「あら、貴女がミオンちゃん?可愛いわね♪」
「ほら、ミオン座りな?」
「う、うん。」
ハリーはカフェオレ、ミオンはオレンジジュースを頼む。
「そうそう、ハリー。私もColorsに入ったのよ!」
「えぇ⁉︎そ、そうなのタツミ⁈」
「あぁ。アイラさんは「資金面でColorsをサポートするのよ♪」
「ハリー、アイラさんって?」
「僕のお母さんの名前だよ」
「ミオンちゃんもそう呼んでちょうだい」
「うんっ!」
「でもお母さん、いいの?」
「大丈夫よ!任せなさい。裏方でサポートするからね」
「じゃぁ団員No.0になるねぇ」
「ミオン、それイイね‼︎」
「正義のヒーロー“Colors”団員No.0、アイラ‼︎」
「じゃぁ、よろしくな、アイラさん」
「任せてよ」
「よし、じゃぁ、次は服だね!」
「友達とショッピングなんて初めて!」
「じゃぁ楽しもう!」
「おー!」
「衣装は曲によって変えるの?」
「んー、どうする?」
「変えないでおくか。そっちの方が楽だしな」
「それいつも着てよう?私はいつも着てたいの。団員の、証だから」
「よし、じゃぁ2着ずつ買って着回ししていこー」
「アイラさん、ふ「服くらい俺が出す?」
アイラさんは俺の口に人差し指を置いて喋るのをやめさせる。
「言ったでしょ?私は資金面担当って」
「…」
「子供は大人に甘えときなさいって」
「…子供扱いするな」
「あら、親にとっては何歳になっても娘や息子は子供なのよ」
肩を竦めて見せるアイラさん。
「…」
「資金面担当なのに貴女が出したら私仕事無くなっちゃうわ」
「…」
「ね?」
「…ごめ、ぁっ‼︎ありがとう」
謝ろうとした俺はアイラさんの言葉を思い出す。
「そーね。ごめんなさいじゃなくてありがとうね。よく出来ました。
…さ、行くわよ!」
「お、おぅ」
アイラさんに手を引かれ歩き出した。
「あ、ねぇねぇこれタツミに似合うんじゃないかな⁉︎」
「ホントだね」
「ホントね、すごくいいじゃない。」
3人が見ているのは銀の糸で模様を作った黒のタンクトップ、その上には赤に、銀の糸で刺繍されているパーカーのセット。
「タツミのカラーだからね」
「似合うと思うわよ?」
「タツミ‼︎」
ミオンはグイッと俺に服がかかったハンガーを差し出す。
「試着してみてよ‼︎」
「試着…?」
「お客様、試着室はこちらですよ」
声をかけて来た店員さん。
店員さんについて行って試着室に入る。
「…じゃぁ、試着してくる。」
シャッ、とカーテンを閉め着替える。
俺が着替えてる間、皆が喋る声が聞こえる。
「…ねぇ、店員さん?貴女よく異色と呼ばれる子に話しかけれたわね。」
「あ…ここ、人が少ないので言いますが私も異色なので…」
「あら、そうなの⁉︎」
「お姉さんもそうなんだねぇ。案外多いよね」
「私、この前公園で君たち見たよ」
「ホント⁉︎ライブどうだった⁈」
「凄かったわ。また来週も行くつもり」
ちゃんと俺たちの歌を聴いてくれてる人が居るんだな
「あの、着れた」
シャッ、と入った時と同じようにカーテンを開ける。
「うぁ…」
「タツミカッコイイ!」
「あらいいじゃない」
「タツミさん、お似合いです‼︎」
ハリー、ミオン、アイラさん、店員さんとコメントをくれる。
「タツミさん、私この前のライブ見てました。一気にファンになっちゃいました‼︎応援してますね」
「あ、ありがとうございます。これからも頑張ります」
「タツミ、カッコいいよ!」
「ありがとな、ミオン」
「タツミちゃん、細いし色白ね!ご飯ちゃんと食べてる?」
「食べてる」
「…」
「…ハリー?」
さっきから何も言わないハリー。
顔を覗き込むとハリーの顔は真っ赤だった。
「ハリー?顔真っ赤だぞ?熱あんのか?」
「…ぅぅぅ、タツミのバカ、鈍感‼︎」
「はっ⁉︎いきなりなんだよ⁉︎」
「に、似合ってるよ?似合ってるけどさー!」
「なんだよハッキリ言えよ‼︎」
「うぁぁぁぁタツミの鈍感ー、バカー」
「おいどうした⁉︎」
そんな俺たちの様子を見て笑ってる皆。
ハリーは俺の目をジッと見つめ口を開く。
「…なんか妙にエロい」
「はっ⁉︎」
「…似合ってるよ」
「うぁ」
「可愛いよ‼︎」
「お、おい」
「似合ってるし可愛いしカッコいい‼︎」
「うぁ、う、あ…」
「なんか妙にエロいし直視できないけどね…」
「だ、黙れよ‼︎」
「げふっ!」
照れ隠しにハリーに蹴りを一発お見舞いする。
「あらタツミちゃん強い‼︎女の子に負けるようじゃまだまだね、ダメコウ♪」
「…うるさいよ」
俺に蹴られたところを抑えながら弱々しく反論する。
「…俺、これにする」
「えぇ⁉︎」
「な、なんだよハリー。大声だして」
「だって…ホントにそれにするの?」
人差し指をチョンチョンしながらハリーは俺を見る。
「あぁ」
「タツミ似合ってるもんそれがいいと思う‼︎」
「ほら」
「え〜…」
「タツミちゃんこれ似合ってるんだからいいじゃない。意外と独占欲強いのね」
「お母さんうるさい‼︎ちょっとは黙ってよ」
「すいません、これ2着くださる?」
「はい。」
アイラさんがレジで服を買ってる間にハリーとミオンの分の服を探す。
ミオンの服はエメラルドグリーンのマキシ丈ワンピ。腰のあたりからフワッと広がっている。それに淡い水色のTシャツのセット。
ハリーはレモンイエローのTシャツ、橙色の上着、黄土色のズボンにレモンイエローのブーツ。
「ど、どぉかな?似合ってる?」
「あぁ。ミオン可愛いぞ」
「えへへ‼︎ハリーも似合ってる‼︎」
「ほら、僕ってなんでも似合ってちゃうからさ〜」
「調子に乗るな」
「ぐふっ‼︎」
それぞれ2着ずつ買い、1着は着て帰る。
「じゃぁハリー。ちゃんとタツミちゃんの言う事聞くのよ?」
「はーい」
「じゃぁ私は帰るわね。皆次のライブ楽しみにしてるわ‼︎」
アイラさんはそう言って帰って行った。