殺戮
「せんせー、血の匂いがする」

瞬間だった…先生の表情が堅くなる。僕は見逃さなかった。

「き、気のせいだよ」

「そう?あれっ、そういえばみんなは?」

辺りを見回して気付いた。生徒が見当たらない。先生は僕を見下ろし

「ちょっと訳があってさっき連絡して、今日は学校休みにしたんだ」

訳……それは奴が死んでいるという理由であろう。先生は僕に「帰れ」と言ったから仕方無く家に帰った。
その日のニュースで奴が自殺したというものが流れた。理由は「虐め」。本当は僕が虐められていたのだが。僕の殺した『奴』の名前は鈴木雄飛。

―――――…‥

僕はゆっくりと目蓋を開けた。窓から見える鉄の塊の世界。それとともに独特の血の匂いが鼻を掠める。今、この名前も忘れた地にいる人間は僕、徒一人。
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