星に願いを



日が完全に落ちて、空は暗くなり街の光が輝き始めている。



空良、何時に来るんやろ―…


時計をチラッと確認し、病室から再び空を見つめる。



「……海、行こうかな」


そう言えば、海行ったことなかったな。


そう、ぼんやり考えながら静かに波打つ海沿いを歩く。



ザァ~ザァ~と暗闇に波の音だけが響き、夏だというのに少し涼しい風が吹いていた。


砂浜ってこんな歩きにくいんやと初めて知り面白かった。



「ずっと海見えてたのにな…。何で今まで来なかったんだろ」


ボソッと独り言を呟き笑う。



目の前には真っ暗な海が広がっていて、その暗闇に引き込まれそうになる。



今頃、両親は俺の余命について聞いてるんだろうか―…



無意識にパシャ、パシャ…と海の中に足を進めていた。


空を見上げると満点の星が散りばめられていて、海に消えていく俺を照らしていた。





………このまま、楽になりたい




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