正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
俺が決意したこと。

それは過去をひっくるめて自分という人間を彼女に知ってもらうことだった。
他人に自分の家庭環境を話したことはない。唯一家を出た経緯を知っている大成くらいだ。

美羽はあの男が不穏な動きをしていることが不安で仕方がないはずだ。
だから彼女はまた眠れぬ夜を過ごすだろう。
俺はリビングで彼女が来るのを待った。

そして予想通り彼女は現れた。不安で押しつぶされそうな顔で。

彼女は何故俺がリビングにいるのか不思議そうだったが、俺の言葉に黙って従った。

そんな彼女を胸の中に閉じ込めると、俺はゆっくりと話を始めた。



彼女はただひたすら真剣に聞いていた。涙を浮かべながら。

俺の過去を悲しんで欲しいわけじゃない。
ただ何をやっても満たされなかった俺が、たった一人の女性との出会いでこんなにも変わったんだということを知って欲しかった。

そのたった一人が美羽なんだということを。


彼女が戸惑う理由。
それは彼女自身も俺に惹かれているからだ。
何とも思っていない相手なら悩む必要もない。

受け入れたいと思っているからこそ怖い。躊躇ってしまう。


全てを聞いた彼女の目には明らかに俺に対する特別な色が滲んでいた。
自惚れなんかじゃない。
ただその一歩を踏み出す勇気がまだ彼女にはもてないだけだ。

ならば少しだけでもこちらから手を差し出そう。
その手を掴んでくれるのなら、俺はもう躊躇ったりしない。

戸惑いながらも彼女が踏み出した一歩を、俺は決して離さないと誓った。

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