正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
あと少しで彼女に辿り着けたはずなのに、彼女が視界から消えていく。

最後に視界に映った彼女は絶望的な顔で泣いていた。



あぁ、俺のせいでまた彼女を苦しませてしまった。

美羽、すまない・・・
どうか泣かないでくれ・・・・







・・・・・・・
俺は不思議な夢を見ていた。


右も左もわからない場所を彷徨っていた。
どちらに行けばいいのか全く分からない場所をひたすら一つの方向に向かって走っていた。
やがてその先に一つの人影が見えてきた。

・・・・・・おふくろ・・・?

幼い頃に死んだはずのおふくろが笑って立っていた。
よく見れば何か言っている。

何・・・?何を言ってる?よく聞こえない。

俺は必死でおふくろ目がけて走った。

あと少しで辿り着く、そう思ったのに、何故かおふくろは首を横に振っていた。
まるで来るんじゃないと言わんばかりに。
理解できないでいる俺に笑いながらゆっくりとおふくろの口が動いた。
俺は何を言っているのか聞き取ろうと目と耳に神経を集中させた。



『あ な た の か え る べ き と こ ろ へ か え り な さ い』



確かにおふくろの口はそう言った。
ハッとして顔を見るとおふくろは笑って頷いていた。





そうだ、俺はこんなところで一体何をしている?

何よりも大切な、かけがえのない存在がいるではないか。
彼女を泣かせたままでいいのか?
いいはずがない。
彼女は俺を待っている。


帰るべき場所へ行こう。




その瞬間俺の意識は浮上した。


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