正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
美羽の異変には御堂も気付いていた。
俺はそれを利用することにした。
彼女に架空の出張を組んでもらい、わざと家を空けることにしたのだ。

はじめから説得したところでおそらく彼女は素直に受け入れないだろう。
ならばここは敢えて彼女の望み通りに動こう。
一人になるということを身をもって体験することで、彼女が気付くことがあるはずだ。


予想通り美羽は悲しげながらもほっとしているようだった。
俺が常に傍にいてはなかなか逃げ出すチャンスがないのだから。

俺を送り出すとき、彼女の心は泣いていた。
顔は笑っていた。
だが心が泣いているのが痛いほど伝わってきた。

俺は平常心を装って家を出た。
玄関の前でしばらく立っていると彼女の泣き声が漏れてきた。

美羽、そこまで俺を想っているのに何故離れようとする?
お前の選択は間違ってるんだ。

俺は心の中でそう呟くと、決意を胸にマンションの外へと出て行った。




必ず美羽が通る場所で彼女が来るのを待った。
いつ出てくるかはわからない。
だが絶対にやって来る確信があった。


・・・・そして彼女は本当にやって来た。
それはすなわち俺との別れを選んだということだ。


悲しかった。
悔しかった。
そして・・・・腹が立った。


本心じゃないのに俺との別れを選ぼうとした美羽に対しても、
そんな彼女を思いとどまらせるだけの力がない自分自身に対しても、
怒りが湧いてきた。


彼女は俺に気付くと驚愕して微動だにできなくなった。
当然だろう、もう二度と会わないと誓ったはずの人間が目の前にいるのだから。


俺は一歩一歩、ゆっくりと彼女の元へと歩いて行った。

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