正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
「わぁ、素敵なお店ですね」
美羽は窓から見える綺麗な夜景に目が釘付けになっている。
今日は久しぶりに二人で食事にやって来た。ここのところ仕事で遅くなることが多く、ゆっくり過ごす時間もあまり取れなかった。
相変わらず美羽は欲がない。忙しくても不満を言うこともなければ、何が欲しい、何が食べたいなどの我が儘を言うこともない。だからこうして俺の提案で時々外食へと出掛けるのだ。
彼女は決して無理をしているわけではない。本当にそういう欲がないのだろう。
幼少期から我慢するのが当たり前だったためか、貪欲に何かを欲しがるという姿を見たことがない。
それが彼女らしくもあるのだが、近頃少しそれを寂しいと感じることがあるのも正直なところだ。
もっと自分に対して我が儘を言ってくれたら何でも聞いてあげるのに。
・・・なんて、一つが満たされるとさらに貪欲になる自分が醜く思える。
だからこそ余計に彼女の物わかりの良さが寂しく感じてしまうのかもしれない。
「ん~、おいしいですね!」
目の前に並んだフレンチのフルコースに舌鼓を打ちながら、美羽は頬が落ちそうなほど幸せそうな顔をしておいしそうに食べている。
こんなことでこれだけ喜んでくれるのなら毎週でも連れてこようか。
そこまで考えて、俺はどれだけ彼女を喜ばせたいんだと苦笑いが出た。
彼女が笑ってくれるなら、俺はどんなことだってしてあげたい。
彼女を妻にしてからというもの、その思いは日に日に強さを増していくばかりだった。