正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
何を思ったか美羽は俺のシャツに手を伸ばすと、そのままボタンを一つ一つ外し始めた。その手はこの上なくぎこちなく、おまけに小刻みに震えている。
俺は見るに見かねてその手を掴んで動きを止めた。

「おいっ、美羽?一体どうしたんだ?」

美羽は戸惑ったような顔を見せるとやがてその瞳からポロポロと涙が零れ出した。

「っどうした?どこか痛いのか?」

思わず上半身を起こすと、そのまま美羽の体が後ろに倒れそうになる。慌てて背中に手を回しその体を支えると、抱き合うような形で向かい合った。

「美羽、一体どうしたんだ?お前がこんなことするなんて・・・」

俺が問いかけると堰を切ったように涙が溢れ出した。俺が指で拭っても拭っても追いつかないほどに。彼女が泣いている原因がわからない俺はオロオロするしかできない。

「・・・・わたし・・・」

「え?」

「私じゃ、潤さんを満足させてあげることが・・・できないかもしれません・・・」

何だ?一体何の話をしてるんだ?
満足?誰が?何を?

「でも・・・それでも・・・他の人のところになんて行かないでください・・・」

蚊の鳴くような声でそう呟いた一言に俺はハッとする。


・・・・やっぱり。
彼女は平気なんかじゃなかった。
あんなことを言われて傷つかないわけがないのだ。
それを言えないだけで、いつも自分で抱え込んでいたのだ。

俺は胸が痛くなり美羽の体をきつく抱きしめた。彼女は腕の中で震えて泣いている。


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