正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】


迎えた週末、美羽は予定通り午前中から出掛けた。
はじめは自分で電車を乗り継いで行くと言っていたが、俺が説得して待ち合わせ場所付近までは車で送っていくことにした。送った先では既に御堂が待っていて、こちらに気付くとすぐに駆け寄ってきた。

「専務、おはようございます。今日は美羽ちゃんをお借りしますね。絶対に無理はさせませんから安心してください」

「・・・あぁ。頼んだぞ」

「じゃあ潤さん、行ってきます」

「あぁ、楽しんでこい」

俺のその一言に嬉しそうに笑うと二人はその場を離れていった。
途中一度だけ振り返ってブンブンと手を振る姿に思わず笑ってしまった。何やら御堂と楽しそうに談笑する姿を見ていると、よほど今日が待ち遠しかったのだろうことが伝わってくる。
やがて雑踏の中に入っていきその姿が見えなくなる。

「・・・あいつもまだ若いんだもんな。色々遊びたいのも当然だよな」


そう。
あれだけしっかりして落ち着いているからつい忘れがちだが、彼女はまだ20代前半だ。しかも大学を卒業したばかりの連中と大差ない。これまで全く自分の楽しみを見つけることもなく生きてきた彼女にとって、こうして誰かと出かけて楽しむなんて、新しいことにチャレンジする子どものように胸を躍らせることなのかもしれない。

最近のどこかおかしい様子が気にならないと言えば嘘になるが、純粋に彼女には楽しんで欲しい、今日の彼女の様子を見ていて俺は素直にそう思えた。
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