正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
美羽が出掛けている間、俺は書斎に籠もって仕事をしていた。

一人で過ごすなんて一体いつぶりだろうか。めったにないこの機会に俺も何かしようかとも思ったが、困ったことに何一つやりたいことが思い当たらない。しかもやる気も起きない。ゆっくり寝ようとソファに転がってみたが、全く眠気がやってこない。

・・・俺は美羽がいなければ寝ることすらままならない体になってしまったらしい。

「この歳になって一人の女にこんなに溺れるなんてな・・・」

書類を手にしながら、自分の変わりようにいつまでも苦笑いが止まらなかった。





「潤さん、こっちです!ありがとうございます!」

美羽から迎えに来て欲しいと連絡があったのは結局夕方だった。朝と同じ場所に迎えに行くと、それはそれは嬉しそうな顔で俺に手を振って待っていた。

「満面の笑みだな。そんなに楽しかったのか?」

「はいっ!」

その無邪気な笑顔があまりにも可愛くて、思わずその場で抱きしめてしまいそうになったが、すぐ隣にいた御堂の視線を感じ慌てて踏みとどまった。見れば御堂がニヤニヤと物言いたげな顔で見ている。

「・・・ふふふ、専務、今美羽ちゃんを抱きしめたい~!って思ってたでしょう?全身からダダ漏れでしたよ」

「・・・・・・・」

悔しいが完全図星なだけに反論ができない。

「今日は美羽に付き合ってもらって悪かったな。えらく楽しかったようだし感謝してるよ」

「いえいえ、こちらこそ美羽ちゃんとデートができて嬉しかったのでお礼を言いたいのはこちらの方です。美羽ちゃん、また一緒に行きましょうね」

「はいっ!あかねさん、今日は本当にありがとうございました」

御堂も家まで送っていくと申し出たが、この後恋人と待ち合わせがあるからと断られた。
彼女とはその場で別れ、俺たちはそのままマンションへと帰った。
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