正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】

「・・・・え?」

あの日から3日、週中日を迎えたところで美羽が意外なことを言った。

「あの・・・明後日の検診日なんですけど、できれば一日有休を取らせてもらってもいいですか?今のところ大きな仕事も入っていませんし・・・もちろん無理だったらいいんですけどっ・・・」

話しながら徐々に自信なさげに声も小さくなっていく。

「いや、全く構わないんだが・・・どうしたんだ?あまり体調が良くないのか?だったら・・・」

「違うんです!どこも何ともありません。ただ、今まで使ってない分をちょっと消化しようかなと思って・・・」

どこかしどろもどろに話す彼女に違和感を覚える。

有休は働く人間に与えられた当然の権利だ。
余程の事情がない限りそれを使うことを咎める理由などどこにもない。
彼女だって然りだ。

だが彼女に関してはひっかかることがある。
美羽は俺の秘書になってから・・・ひいてはうちに入社してから、一度たりとも休んだことがないのだ。あの事件後の特別な事情を除けば。

俺はこれまで何度も有休を消化するように勧めてきた。
特に妊娠が発覚してからは体調が完全じゃない日もあり、その度に無理をせず休むように言ってきた。せめて病院に行く日だけでも休んでゆっくりしたらどうだと言っても、彼女は決して休もうとはしなかった。

・・・それなのに。
突然自分から休みたいと言ってきたのだ。しかも体調が悪いわけでもないと言う。
急に一人で外出したいと言い出したり、休みが欲しいと言い出したり、それ以外にも普段の彼女からは想像もつかないような行動の数々・・・

これは単なる偶然なのだろうか?
俺の中で忘れかけていた疑念がふつふつと再燃してくる。
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