正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
俺は握りしめた手にグッと力を込めるとゆっくりと息を吐き出し心を落ち着かせた。
そしてドアを軽くノックする。その瞬間、中からガタガタと慌てて席を移動するような音が聞こえてきた。

・・・・何でそんなに慌てる必要があるんだ。
そんなに俺に見られたら困ることでもあるのか。

俺は心中穏やかではなかったが、それを出さずに平常心を保って中へと入った。御堂はもう帰ったのか他の用事で席を外しているのか、部屋の中にはやはり美羽と成田の二人だけだった。どちらも先程の会話なんてなかったかのようにいつもとなんらかわらない様子でデスクに向かっている。
俺に気付いた美羽が嬉しそうに立ち上がった。

「専務、お疲れ様でした」

「・・・・・あぁ。・・・・何も変わったことはないか?」

俺は暗にさっきのことも含んで聞いてみたのだが、当然美羽はそんな意味に気付くはずもなく、ニコッと笑って頷くばかりだ。ちらりと成田を見てみても、こちらもまたどこもおかしな様子は見せない。


・・・・・なんだんだよ、一体・・・


俺は得体の知れない何かに再び心がざわついていた。
・・・いつまでこんなことが続くんだろうか?
美羽のことは信じている。
だが、延々とこんな状態を続けられたらさすがに平常心を保ち続ける自信がない。いっそのこと隠し事をするならばれないようにしてくれる方がいい。中途半端に何かが見え隠れするようなやり方は俺にとっては拷問だ。

「もう帰れるのか?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ帰るぞ」

「はい!じゃあ成田さん、お先に失礼します」

「お疲れ様。専務もお疲れ様でした。・・・検討を祈るよ!」

美羽が部屋を出る瞬間小さな声で成田がそう言ったのを俺は聞き逃さなかった。
検討を祈る?誰の?何を?
・・・わからない。全くわからない。
ますます俺のイライラは募っていった。
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