正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
可愛い小鳥には旅をさせよ
「わぁ~!凄く空気が澄んでて気持ちがいいですね!」
窓を開けてその空気を盛大に吸い込みながら美羽の笑顔が弾ける。
「はしゃぐのはいいけど顔は出し過ぎるなよ」
「ふふっ、いくらなんでも大丈夫ですよ」
彼女の機嫌は最高潮に良さそうで、こちらまでもらい笑いが零れてしまう。
俺たちは今車で山梨へ向かっている。
『美羽、今度ゆっくり旅行でもしようか』
俺の提案で決まった今回の旅行。
予想もしていなかった話に彼女はしばし呆然としていたが、すぐに破顔して頷いた。
ずっと前から彼女とゆっくりどこかに行きたいと思っていた。
入籍してからは仕事が忙しくてそんな暇もなく、ようやく少し落ち着いた頃に妊娠が判明。美羽の身体を第一に考え計画は実行せずにいた。考えれば新婚旅行すら行っていない。欲のない彼女はそんなことこれっぽっちも気にしていないようだが、やはりいつかはどこかにゆっくり二人で行きたいとずっと考えていた。
美羽が妊娠6ヶ月を過ぎ安定期に入ったのを機に、二人きりでは最初で最後になるかもしれない旅行に思い切って行くことに決めた。もちろん第一に彼女の身体のことを考えてのものだ。
新婚旅行も兼ねてということで、共に休みを使って平日にゆっくりでかけることにした。美羽への負担を考慮して三泊四日の旅だ。
行き先を決めるにあたって、美羽にどこでも好きな所に連れて行ってやるから何でも希望を言ってみろと話をしてみたところ、
『温泉に入ってみたい。富士山が見てみたい』
悩んだ結果この2つの希望が上げられた。
美羽の負担にならない程度の距離でこの条件を満たすところ、それで山梨に決めたというわけだ。