正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
「混んでるな・・・。これだと結構歩かないと駄目だな。美羽、入り口まで連れて行くからお前は先に降りて座って待ってろ」

「え、でも」

「俺も車を停めたらすぐに行くから」

「・・・わかりました。お気遣いありがとうございます」

美羽をエントランスで降ろしすぐ近くのベンチに座るのを確認すると、俺は急いで駐車場へと戻った。

早いもので旅行もあっという間に最終日。
美羽の希望で買い物へと出向いたのはいいのだが、あいにく駐車場はほぼ満車状態。少し離れたところでようやく空いたスペースを見つけると、俺は美羽の待つ場所へと駆け足で向かった。

人混みをかき分けて彼女の元へと急ぐ。ようやく先程の場所が近付いて遠目に彼女の姿をこの目に捉えたところで何か違和感を覚えた。

「・・・なんだ?」

よく見ると、美羽は誰かと話しているように見える。視線の先を確認すると若い男が美羽に必死で何かを話しかけている。美羽は笑いながらもどこか困ったように首を横に振っているのがわかる。

「くそっ、ナンパか?」

体のことを考えて行動したのが裏目に出たか。俺は忌々しい気持ちを抑えてダッシュで向かった。




「・・・・・らさ、今度集まろうよ」

「でも、私は・・・・」

「そんなこと言わないでさ!こうしてせっかく会えたんだし」

「あの・・・」

近付くにつれ徐々に会話が耳に聞こえてくる。やはり彼女は困っている。思わず舌打ちが出た。

「だから」

「うちの妻に何の用だ」

俺は自分でも驚くほど地を這うような低い声が出ていた。
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