正しい小鳥の愛し方【愛を知る小鳥 特別番外編】
「今どんな状況なんだ?」

個室に戻ってきて美羽がベッドに腰掛けたところで一番気になることを聞いた。

「陣痛の間隔が7分くらいになってきたんですけど、まだ子宮口の開きが小さいみたいで・・・。だからああやって少し体を動かしてお産を進めてたんですよ」

「そうか・・・。悪いな、何もできなくて」

妊娠・出産については彼女と一緒に本を読んだりしてそれなりに勉強したつもりだが、いざその時がきてみれば男の俺にできることは何もないことがもどかしい。

「どうして謝るんですか?こうして傍にいてくれることが一番の力になるんですよ。仕事まで早めに切り上げて来てもらえて・・・私もこの子も幸せ者です。ありがとうございます」

お腹を愛おしそうに撫でながら微笑む彼女は溢れんばかりの母性に満ちていた。
初めての出産で不安でいっぱいなはずなのに、この落ち着きはどこからくるのだろうか。
その姿は神々しくすらあった。
俺は彼女の隣に腰掛けると、そっとその体を引き寄せた。

「無事に生まれてきてくれよ・・・」

大きくなったお腹を撫でると、俺の手に小さな手が重なる。
その手をさらに反対の手で包み込むとぎゅっと力強く握りしめた。

「ふふっ」

照れくさそうに顔を上げた美羽と視線がぶつかると、俺も自然と笑顔が零れた。
陣痛真っ只中だとは思えないほど穏やかな空気に包まれていた。




この時までは。
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