君の一番になりたくて





「ちわー。」

あれから、俺は保健室に通っていた。
いや、前から保健室の常連客だったけど。

「あら、また来たの。」
いや、来いって言ったの先生ですからね。

「ハル先輩、こんにちは。」
「おう。・・・はい、これ。」
「あ、カフェオレ。ありがとうございます!」
「いえいえ。」
「えー、先生には?」
「学生の財布に先生のまで買う余裕ありません。」
「ちぇっ、」

いや、生徒に奢らせる先生もどうかと思いますよ。




「あ、やだ。こんな時間。
私今日出張だったのよね。」

慌てたように先生が立ちあがる。
そそくさと荷物をまとめて、
「じゃ、夕方には帰ってくるから。」と立ち上がる先生。



「そうだ、ハル先輩。」
「ん?」
「これ、どうぞ。」

北野の手にはキャラメル。
「この前の花瓶のお礼です。」
そういいながら微笑む彼女。

「ん、ありがたく貰っとく。」
包装紙を取って口に放り込む。
カフェオレの味と混ざったそれは、
甘くて仕方なかった。
でもその甘さも嫌じゃなかったり、なんてな。






ガラッ

「しつれいしまーす・・・て、ハル?」



「げ、ユキ。」
「もー、体育サボってるかと思えば、
こんなとこで女の子とイチャイチャしてたの?」
「談笑中だよ。」
「あ、俺、雪澤祐汰。ユキでいいから。
よろしくね!」
「あ、はい・・・。」


北野のよそよそしい態度に少し、違和感を覚える。


「あ、で、名前、なんていうの?」
「あ、えと、北野玲です・・・。」
「玲ちゃん。いい名前だね!
もー、ハルってば、こんな可愛い子と談笑なんて、
なんで俺に紹介しないんだよー。」
「いいだろ、別に。
で、何しに来たんだよ。授業中だぞ。」
「そのセリフ、ハルだけには言われたくないね。」
「うっ、」


ユキってたまにグサッとくるようなこと言うよな。
ナチュラルに傷つくわ。


「ちょっとね、怪我しちゃってさ。」
「うわ、ださ。」
「ちょ、ハル酷い。
手当てしてもらいに来たんだけど・・・。」
「残念ながら先生は出張中だ、気力で治せ。」
「無茶言うなって・・・。
あ、じゃあ玲ちゃん手当てしてよー。」
「え、あ、はい。」
「あ、マジでしてくれるの?やったぁ!」


嬉しそうに北野の隣に座るユキ。
その距離感に少し、苛立つ。


「玲ちゃん、優しくね、優しく!」
「は、はいっ、」







「え・・・?」
「ハル先輩?」
「っ、あ・・・。」


気づいたら、北野の持つ消毒液を奪っている俺がいて。



「俺が手当てしてやるよ、」なんて言って、
さりげに北野とユキの間に座って。

「おい、ハル!優しくな!!」
「やなこった。」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!」


ユキの傷口に八つ当たりするように、
消毒液をぶっかけている俺がいた。
< 6 / 15 >

この作品をシェア

pagetop