褐色のあなたに水色のキミ
センチメンタル
私は、山田さんに愛されていない。単なる欲望のはけ口…。


それでも週末は、山田さんが来るのを待っていた。揚げなすの煮浸し、さんまの塩焼き、味噌汁…シンプルな和食を作りながら…。


ガチャガチャ…と、愛鍵で玄関のドアを開ける音がすると、飼い主の帰りを待ちわびた犬のように、慌ててかけてゆく。


「おかえりなさい」


笑顔で迎える。終電には帰ってしまうのに…。そんな私に、山田さんは笑顔で応える。


「ただいま」


後ろ手で鍵を閉めると、玄関で抱き合う。唇が軽く触れるようなキスを交わすと、山田さんはネクタイを緩めながら、部屋に入る。


「美味しそうなにおい、してる」


「今日は、ねぇ…」


献立を教えてあげようとした私の唇を、彼が塞ぐ。不意打ちのキスに、身体中が熱を帯びる。


「美味しそうなにおい…って、料理やない…」


そう言った山田さんは、私をお姫様だっこした。


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