褐色のあなたに水色のキミ
今夜も彼と抱き合う…。彼は、前戯にも時間をかけるし、私が性的絶頂を迎えなければ、満足しない。それは、私を大切に思うから…だと言う。


そう言いながら、トイレの個室で自分勝手な行為に及んだりする。彼の気持ちがわからない。不倫とは、そういうものなんやろうか…?


頭の片隅でぼんやりとそんなことを考える自分と、彼を欲している自分が共存するこの身体…。


今夜も褐色に染められて、ベッドの上で甘い声を出さずにはいられない。


「山田さん………」


「こんなにも近い距離にいるのに、苗字で呼ばんといて?」


付き合っていたころからずっと苗字で呼んでいた。あのころより、ふたりの距離は近いの?


「一誠さん………」


彼の身体にしがみつき、消え入りそうな声で、名前を呼んだ。


「いい子やね。ご褒美をあげよう。いいか?」


彼からのご褒美を全身で受け止めると、さっきまで頭の片隅にあったことなど、どうでもよくなっていた。


一誠さんが、好き…。




< 34 / 84 >

この作品をシェア

pagetop