褐色のあなたに水色のキミ
行為を終えると私を残して、何食わぬ顔で女子トイレを出て行った。


大きく深呼吸をしながら、自分を取り戻す。ショーツが湿っぽい。スカートの奥から、メスのニオイがしないか気になった。


リップを塗って、ヨシ…と小さく呟いてトイレから出た。その時、ちょうど男子トイレから、スッと誰かが出てきた。


「あっ………」


思わず、ビクッとする。軽く会釈をして、その場から立ち去ろうとした。


「あっ!朝倉さんっ!」


呼び止められ、立ち止まる。振り向くことは、できないでいた。


「話したいことが、あります」


「時間が、ありませんから…」


ウソではなかった。ティータイムは残り数分だった。


「では…今週の金曜日、時間をいただけませんか?」


「…わかりました…」


「また、メールします」


私は大きく頷くと、階段のほうへ向かい、1段1段、踏みしめるようにして歩いた。


軽い、目眩がした。


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