褐色のあなたに水色のキミ
「何、飲みますか?ビール?」


私が頷くと、生ビールをふたつ、注文した。はぁっ…と、ため息をつくと、ネクタイを緩めて、チラッと私に視線を送った。ぶつかった視線を受け止め、私から切り出した。


「話…って、なんですか?」


もしかしたら…トイレでの行為を口止めする代わりに、オレとも関係を持て…とか言わへんよね?


「あ、いや………」


なぜか、言葉を濁した。ますます怪しいと思った。やっぱり、脅す気なんやわ…。そう思った時だった。


「内容は…ありません…。ただ、朝倉さんと…話したいと…思っただけです…」


カフェの時のように、言葉を選びながら、ゆっくりと言った。


鼻から疑ってしまった自分を、恥じた。福岡さんは…見た目より、純粋な人…なのかもしれない。


「そうですか…。誘っていただいて、ありがとうございます…」


逢瀬のことやなかった…。ホッとして、自然と笑みが浮かんだ。


「…へへっ…」


それにつられるようにして、福岡さんも笑った。




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