褐色のあなたに水色のキミ
残りのティーソーダを飲み干すと、仕事スイッチをオンにした。鳴り響く電話にも、明るい声で応対する。


『はい、こちらの商品は在庫がございますので、明日の14時までにご発注いただきますと、即日出荷可能です…』


電話中の私の横を、グレイがかったゴールドのジャンバーを着た男性が、通り過ぎた。背中には『アッシュゴールド』の文字。オフィスに置いてある、コーヒーサーバーをレンタルしている会社の人だ。定期的にオフィスにやってきて、コーヒー豆や備品の補充、サーバーのメンテナンスなどをして帰る。


何気なく、その背中を見送る…。今まで担当していた人やないな、そう思いながら。そしてまた、電話応対。電話のベルは、容赦なく鳴り響く。他のことを考えるヒマを与えないくらいに。


不思議なことに、電話がピタッと鳴り止む時間がある。さっきまでうるさかった電話が、鳴り止んだ。


ふぅーっと伸びをしてから、ガムのボトルに手を伸ばした。ボトルが指に触れるか触れないかのところで、誰かが、私のデスクで立ち止まった。




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