褐色のあなたに水色のキミ
視線を向ける。指は、ガムのボトルに触れたが、自分のほうに引き寄せることもできなくなった。


「ご無沙汰してます」


あのころと変わらない笑顔を見せると、私のデスクに名刺を置いて、去って行った。


しばらくはそのまま、ぼんやりとしていた。電話のベルにハッとして、仕事スイッチが再びオンになった。


電話を終えると、やっと名刺に触れることができた。名刺には


『株式会社アッシュゴールド
肥後橋営業所
ルートセールス 山田一誠』


…と、記されていた。『今夜、食事でもいかがですか?』という、ふせんに書かれたメッセージを添えて。




< 8 / 84 >

この作品をシェア

pagetop