褐色のあなたに水色のキミ
洗った食器を、布巾で拭く。重ねた食器をまとめて食器棚に片付ける。私のその動作を無言でみつめる、一誠さんの視線が痛かった。


でも、今回は、黙って逃げたりしない。


「ごめんね、おまたせ。カフェオレでもいれようか?」


「いや、ええわ」


そう言ってテーブルの近くに座った一誠さんに続いて、私も座った。なぜだかお互い、三角座りだ。


「私のことを、好きかもしれへん人がいてて、確かめにいった」


「…それで?」


「その人の気持ちは、よくわからんかった…」


「…そう…」


一誠さんは立ちあがると、コートを羽織った。


「帰るわ」


まだ、終電までずいぶんと時間があった。私の発言が、一誠さんの気に触ったのは、間違いなかった。


「ご、ごめん…」


「別に、謝ってもらうことやない」


そう言って部屋を出た一誠さんを、追いかけた。こんな風にさよならするのは、嫌やったから。





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