人鬼姫
鬼を全て倒し、地上に降りると紅丹臣はまだ鬼と戦っていた。
まだ戦っているのかと思い、再び刀を引き抜く。
「紅丹臣、なにをしているの。早く倒さないと」
紅丹臣は聞いているのかいないのかこちらを向かずに、その鬼と刃を交えていた。
「……私も加勢しようか?」
紫苑がそう言うと、鬼の方がこちらを見る。
その鬼の視界が紫苑をとらえると微笑みを浮かべ、言葉を発した。
「おやおや、貴女が紫苑さんですか? わたくしは早見と申します。ふふ」
早見と名乗った鬼は、鮮やかな青色の髪をしていた。
刀をしまうと艶があり胸までの長さであるその髪を弄りだす。
紫苑は髪を弄びながらあやしく笑うその男に嫌悪感を覚えた。
と、紅蓮がやっとこちらを向く。
「紫苑! コイツ、強くて速い。気をつけろ!」
「わかった……時に早見さん、貴方は一体何者なのです?」
紅丹臣はそれだけ言って一歩引いた。
また、それに反して紫苑は一歩前に出て早見に何者なのかと問いかける。
「ふふふ、そうですねえ」
そう言って早見は考えるような素振りを見せたが、実際はなにも考えていないようなことは二人にもわかった。
紫苑はさらに前へ足を出す。
「惚けていないで教えてください。私も気長ではありません」
刀を早見の方へと突き出し、紫苑は彼を睨んだ。
なんなの……この早見という鬼は。
「わたくしは貴女ともお手合わせ願いますがね。ふふふふ」
相変わらず薄く笑っている早見は、また刀を鞘から抜き出した。
両者ともに刀を構え、お互いの眼を見る。
また、紫苑は軽く早見のことを睨んでいた。