レジスタと魔法譚




若者は真摯な眼でそう告げる。

帝は当然ながら迷うはずもなかった。

帝とて我が子が可愛くないわけではない。

しかし国全体のことを思えば、いくら我が子とはいえ、多少の犠牲と考える他はない。


「……わかった」

「ありがとうございます。
では、6人の御子を私にお預けください。
万象を管理する力を移し終えたら、再び、御子さまたちはあなたのもとへお返しいたします」


若者はそう言うと、ひょう、と指笛を吹いた。

するとどこからともなく、ふらふらと6人の帝の子が若者に歩み寄る。

15、16前後の子供達にしては、やけに蹌踉な足取りだった。


「では」


若者は慇懃に頭を下げると、子供達もろとも、一瞬で煙と化して消えてしまった。


ーーー子供たちが帰ってきたのは、それからひと月後のことだったという。

帝は自然災害を鎮めるため、都の周囲に6つの村を作り、そこをそれぞれ1人ずつ、子供たちに収めさせた。

ジネンを管理する力を得た子供たちは、その村で長らく管理活動をし、都と大陸全土の平和を守ってきたのだそうだ。


この万象を管理する力こそが、のちの“魔法”の原点であり、その魔法を駆使するものを“法士”もしくは“魔法士”という。





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