レジスタと魔法譚
開祖である6人の御子が命を落とすと、その力はそれぞれの村の子供達へと継がれ、ジネンを操作する力はみるみるうちに村に広がっていった。
いかにすれば土をこやせるか。
いかにすれば水の流れを操れるか。
いかにすれば燃え移らぬ火を起こせるか。
いかにすれば雨を降らせるか。
村の民は、ジネンを操作する力を“咒(まじない)”によって発動できるよう工夫を凝らし、現在のような呪文を要する魔法を作り上げたのだった。
そして現在ーーー2142年、都の周囲に作られた魔法士の住まう集落が出来上がったのである。
御子の長男・ドリアードを開祖とした土遁魔術の村。
長女・ウンディーネを開祖とした水遁魔術の村。
次女・サラマンダーを開祖とした焔遁魔術の村。
三女・アウラを開祖とした雷遁魔術の村。
次男・シルフを開祖とした風遁魔術の村。
三男・ウィスプを開祖とした陽光魔術の村。
それぞれ6人の御子の名を受け継いだ村は、太古より滅びることなく、細々と魔法による営みを続けてきた。
受け継がれる限り、滅びることのない力。
村の民たちは、魔法士の血を絶やさぬことを絶対の掟とし、自ら戦や厄介ごとに関与し、魔法を行使することを禁忌とした。
戦に巻き込まれぬよう、いざこざを起こして攻め込まれぬよう……。
そうして、6つの村は平穏を保ってきたが、平穏というものは長続きしない。
こちらが火の粉を振りまかなくとも、相手が勝手に振りかけてくる場合というものがある。
長男の村・ドリアードが、突如やってきた謎の魔法士集団によって壊滅したのだった。