レジスタと魔法譚



*





“土遁の村、一夜にして焼け落ちる”


町一帯に、そう記された記事が張り出される。

街をゆく人々が、その赤レンガに貼られた記事に目を凝らし、声を上げるのだった。


「こりゃあ、えらいことになったぞ」


そんな声が聞こえた。

土遁の魔法士が住まう村が壊滅したということは、すなわち、土を肥やし管理する力を失ったということになる。

古から続いた豊作が、途絶えることになるかもしれないのだ。

百姓や米商人にとっては、大打撃である。


「いってえ、誰がなに考えてこんなことを……」


鍬を抱えた年寄りの百姓が、そう呟いた。

魔法士の1人や2人を殺す程度ならまだしも、この事件の場合は、全員あの世行きの、壊滅状態である。

ジネンを管理する魔法士が根絶やしにされれば、ジネンを管理する力は今度こそ失われる。

ひとつでも欠ければ、民たちの豊かな生活は保障されなくなるのだ。

魔法士を根絶やしにしたところで、金になるどころか、ゆくゆくは自分の首を締めることになる。

逆に、なにがしたくて村を壊滅させたのかがわからない。


「生き残りの魔法士が1人でもいりゃ、いいんだがなあ」


そう零した飯屋の旦那の隣を、そそくさと早足で過ぎて行く若者がひとり。



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