雨の日は大声で歌をうたおう
 最後の対話と思って生きる

不妊治療をしていた結婚10年目の友達の話。

彼女は自分の遺伝子を残してみたい、という
強い希望があって、どうしても子供が欲しいと言った。
私は取り立ててそういった欲というか、希望、感情はないので
不思議な気持ちで話を聞いていた。
ご主人も治療には協力的で、都内にあるその筋では有名な病院に通院していると
話ていた。

私たちは仲は良いのだけど
住まいが離れているので
年に一度会うか会わないか、なのだが
随分会っていないな、と気づいた私が
ある時メールをしてみたら、
実は色々とあってご主人が亡くなった、ということだった。
会社にて、会議中、いきなりバタンと倒れて即死だったという話だった。
いつも忙しいと聞いていたから過労死じゃないのかな、と思うのだが
なかなか過労死って判断つかないんだそうですね。
原因は脳の病気、と言ってたように記憶する。
結局、彼女は彼のものと掛け合った遺伝子を残すことはできなかった。


朝、普通に「いってらっしゃい」と見送った人が
それっきりになってしまうということ。

最後に見た顔はどんな顔だったか。

最後に見せた顔はどういう表情だったか。

最後に交わした言葉は。

最後に食べた食事は。

後悔はなかったか。
私は今まで何をしてあげることができたのだろう?


友達から話を聞いた時、
私は自分に置き換えて、色々と考えてみた。

日々、これが最後、と思って行動するのはなかなか難しいけれど
たまに思い出して生きていくと
相手を、今この瞬間を大事にしよう、と戒める。
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