*とある神社の一人ぼっちな狐さんとの、ひと夏の恋物語*
神社の左隣にある倉庫。
そこには食糧を置いていた。
そこから、団子を取り出す。
「・・・俺が食べたいだけだ。」
そう言い聞かせるようにして、
団子を持って倉庫を出る。
すると、神社から出た彼女が、
鳥居の下に立ち、長い階段の下にある小花駅を見下ろしていた。
その横顔に夕日があたり、
大人っぽく艶っぽく見えた。
そんな描写を破るように、
俺は片手に団子を持ったまま、
もう片方の手でクシャ、と髪を乱暴にかきあげた。
この俺が、・・・あやかしが、
人間の小娘にときめくはずがない。
「おい、小娘・・・。」
「うわっ、?!」
朱里はその呼びかけに酷く驚き、
肩を跳ね上がらせた。
その光景と、
昔見た光景が一瞬、重なった。____