月に隠れた言葉
ほんと、電話で良かった。
赤いであろう自分の顔を見られることがない。
「そりゃ、どーも。」
ちょっぴり強気な発言のつもり。
でも、奴はそれも分かっているようで、クスリと笑う声が聞こえた。
『ほーんと、志乃は変わらないね。』
中学の時から。
優しげなその声が、私の心を引き寄せようとする。
─私と智則は、同じ中学で同じ部活に所属していた。
同じ部活のよしみで何となく仲良くなったのだけど、智則の優しい紳士的な性格が心地よくて、中学卒業する頃には、一番仲の良い友達になっていた。
高校は別れてしまったけど、今みたいに時々会ったり話したりする仲だ。
『…最近はどう?』