月に隠れた言葉
『不安なんだ。
志乃どんどん可愛くなって、彼氏できたりして俺のこと頼らなくなったら、ってさ。』
「そんなことっ、彼氏できたって、智則にはなんでも相談するよ?」
『そうじゃない。
志乃が遠くに行っちゃうのが嫌だって言ったら、女々しいかな?』
うわ…
「も、限界です…」
『なーにが?』
「察して下さい…」
ここまで遠回しに伝えて、はっきりとその感情の名前を告げない智則は、ずるいにもほどがある。
そのこそばゆくてもどかしい感覚に堪えられずに、私は降参の声を上げるんだ。